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生薬とは


生薬とは


   生薬とは、天然に存在する薬効を持つ産物から有効成分を精製することなく体質の改善を目的として用いる薬の総称である。一般通念として広く浸透しているように動植物などの天然の素材を原料とする医薬品と考えて差し支えないが、一方で伝統的に食品にも生薬にも用いられるグレーゾーンに属するもの(特に香辛料に多い)が少なからずあることも確かである。医薬品としての生薬を定義している。それによれば:
第1条で医薬として用いられる生薬の範囲を次のように規定している。 
(1)動植物の薬用とする部分:植物の葉、根、花、果実など
(2)(動植物の)細胞内容物:デンプン、精油、油脂、ロウなど
(3)(動植物の)分泌物:センソなど
(4)(動植物の)抽出物:カンテンなど
(5)鉱物
第2条で、上述の素材に簡単な加工を加えたものであること。
第3条で、原則として乾燥したものであること。
以上の3条で事実上「生薬の定義」を行っている。

1.生薬は多成分系薬物である
生薬には多種多様な化学成分が含まれているが、明確な薬効を示すものは少なく有効成分がはっきりしないものが多い。たとえ有効成分が明らかであっても生薬として服用する限りおびただしい種類の化学成分とともに服用していることになる。したがって生薬では成分の相互作用も考慮する必要がある。

2.漢方薬と民間薬の違い
生薬といえば天然物、とりわけ植物起源の薬物であるが、世間では全ての生薬は漢方薬と考えることが多い。無論、これは誤解であり生薬学においては使用法に大きな差があることから民間薬[薬用ハープ(herbal medicine) と呼び表すことも多い]と漢方薬とを区別している。漢方薬とは漢方医学の独特の理論に基づいて処方される薬物である。一方、民間薬とは医師や薬剤師の関与なしに民間で伝承的に用いられる薬物である。民間薬の用法は全て口伝によるもので、理論的裏づけがあるわけではなく、漢方薬のように複数の生薬を配合して使うことはない。漢方薬には生薬の採集、加工時から品質維持に関して経験的な規定でもって管理されているが、民間薬ではそういうことはない。生薬は漢方医学以外にも、民間薬として単独で使用する機会もあるが、漢方薬とは複数の生薬を漢方医学の理論に基づいて組み合わせた処方であり、決して同一ではない。

3.薬食同源について考える
アフリカに生息するチンパンジーはある種の植物を薬草として食べるという報告がある。また、チンパンジーのような高等な類人猿でなくとも、イエネコが庭に生える草を食べて「毛玉」を排出することはペット好きの人にはよく知られたことであり、これもイエネコによる薬草の利用と考えられなくはない。生薬という天然起源の薬物は前述の動物よりはるかに知能の高い人類が無数の試行錯誤を繰り返して選抜したものといってよいだろう。その中には食と薬の中間の性質をもつものもあったはずである。
いわゆるミカンはおいしい果実であるが、そのミカンの木は栽培種であって野生しない。ミカンの原種はいずれも酸味が強くて食に適さず、現在われわれが食するミカンは祖先が気の遠くなるほど長い時間をかけて改良を加えた結果である。一方で、ミカンを世界でもっとも早く栽培したのは中国人で、最初は食用ではなく薬用であったという説がある。オレンジの皮をジャムとしたものがマーマレードであるが、当初は薬用であったといわれる。ここに食と薬の分化の原点がある。
今日、人類は三大栄養素のうち、炭水化物を穀類から、脂肪およびたんぱく質を豆類、動物肉から摂取するが、一方でさほど三大栄養素の含量が高くない野菜、果実などを摂取する。野菜、果実を摂取するのはビタミンなど補助栄養素の摂取のためであるが、フラボノイドなどをはじめとする相当量の二次代謝物(生物が物質代謝で作り出す種固有の化学成分群)も含まれている。二次代謝物は栄養学の立場からは全く役に立たないものであるが、最近の研究ではこうした二次代謝物の存在が健康維持に役立っているという報告がなされている。フラボノイドは一般に瀉下作用があり、毎日適当量を摂取することで快通をもたらすといわれ、実際、フラボノール類にはかなり強い瀉下作用が報告されている。漢方流にいえばいわゆる食毒を拝し病気を断つということになり、すなわち健康によいということになる。一時期、ワインが心疾患の予防によいとして流行したことがある。フランス人は高脂肪食かつ喫煙率が高いにもかかわらず意外と心疾患の羅病率が低い(いわゆるフレンチパラドックス)のはフランス人がワインを多く飲用するためというのである。ワインにはブドウのアントシアニンに由来するポリフェノールが多く含まれるので、その抗酸化作用により心血管系が保護されるためと説明され、ワインが飲めない下戸にはアントシアニンを多く含むサプリメントをと健康雑誌の通俗記事には関連記事が満載である。確固たる科学的根拠があるわけではないが、健康維持には薬食同源が最高と多くの人が支持しているのは確かである。薬食同源とは食品、ハーブ、生薬に比較的普通に含まれる二次代謝物を利用した健康維持思想と考えてよさそうである。漢方薬で繁用される生薬の多くは薬理活性試験で作用が緩慢のものであるが、薬食同源と観点からは注目されているものが多い。また、米国のデザイナーフード計画の癌予防プログラムでリストアップされているものも同類の物が多い。最近、ハーブとして輸入され、補助食品として販売されるものもこうした類のものである。





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