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漢方薬について(1) 漢方薬は、数千年の年月をかけて、患者さんの症状に合った生薬の組み合わせを生み出しました。よく「漢方」イコール「漢方薬」と思っている方がいますが、漢方薬は漢方医学という東洋医学の一部で、他に針灸、養生、按摩、気功・太極拳なども、漢方医学の治療法です。 これに対して漢方薬は、数千年にわたる効き目や安全性に関する長い経験に基づいて、特有の理論体系を築き上げ、その理論と患者さんの症状に応じて、いくつもの生薬を組み合わせて使うようになっています。そのため、一つの漢方薬でさまざまな症状を治し、複合的な効果を期待することができます。まさに、高齢社会を迎えて、いくつもの症状をかかえ、たくさんの薬をのまなければならないお年寄りに適した薬だといえましょう。さらに漢方薬は、西洋医学では対処しにくい半健康状態から慢性疾患にいたるまで、広い症状に対処できることが、多くの先生方に認められるようになりました。このように、広く使われ、科学的な研究も進むようになってきて、漢方薬が今の医療にとって大切な薬であることが、西洋医学からも認められてきています。 西洋薬の多くは、有効成分が単一で、切れ味が鋭く、即効性があるため、感染症の菌を殺す、熱や痛みをとる、血圧を下げる、といった一つの症状や病気に対する直接的な治療に適しています。一方、漢方薬は、いくつもの生薬を組み合わせて作られた薬ですので、慢性的な病気や全身的な病気の治療など、複雑、多彩な症状に効果を発揮します。現在の医学で使われている薬のほとんどは、化学合成によって作られたもので、「西洋薬」「化学薬」などと呼ばれています。 かつて恐れられていた感染症や伝染病は、抗生物質の普及やさまざまな西洋薬の開発により、比較的容易に治すことができるようになりました。しかし高齢社会に突入したわが国では、高血圧、糖尿病などの生活習慣病(成人病)の増加、加えて、免疫異常による気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患や心身症、ストレス病など、複雑な病気が増えてきました。このような病気に対して、西洋薬だけでは十分な対応ができないことも多く、漢方薬の役割が期待されるようになってきました。すなわち、新薬を患者さんの症状の数に応じていくつも処方するのではなく、西洋薬に漢方薬を加えていろいろな症状にうまく対処して、漢方薬を中心に治療し、急性期などの要所に西洋薬を使い、お互いの長所を生かすなどの、新しい治療法が取り入れられてきています。 人類の長い歴史の中では、身近な天然物(生薬)が薬として使われてきました。そして、そうした生薬中の有効成分を取り出し、それに簡単な化学的な手を加えたのが新薬で、誕生したのは、わずか一~二世紀前です。一方、漢方薬は二千年に及ぶ使用経験を通して、効き目や安全性が確かめられてきています。そして現在、使われている西洋薬の多くは、天然物に起源のあるものです。西洋薬は有効成分だけから作られているわけですから、その分切れ味が鋭く、即効性があることが特徴ですが、反面、効き目が強く出てしまって、使い方によっては好ましくない作用が出てしまうこともあります。また西洋薬は、一つの薬でいろいろな症状をとることには不向きです。漢方薬は、いくつもの成分が助け合って働くことで、多彩な症状にマイルドな作用を示します。また、「弱り目に祟り目」という言葉のように、人は免疫力が落ちた時は、病原菌に感染しやすいものです。ですから大切なことは、菌を殺すことだけではなくて、むしろ感染に負けない体質に変えて、病気に対する抵抗力を高めていくことです。こうした働きも、漢方薬の得意とするところです。漢方薬は、合併症やいくつもの症状をかかえている患者さんが増えている、これからの社会に適した薬だといえましょう。 |